国民生活センターが注意喚起“かつら用ヘナ”でアナフィラキシー
20年前から続く「ニセ天然ヘナ問題」について解説!


2026年5月20日、国民生活センターが「酸化染料を含むヘナ製品によるアナフィラキシーが発生」という注意喚起を発表しました。

今回問題となったのは、植物100%ヘナではなく、「かつら用ヘナ」として販売されていた、化粧品ではない製品です。

国民生活センターによると、その製品からは、酸化染料の一種であるパラフェニレンジアミン(PPD)などが検出され、実際にアナフィラキシーショックなどの健康被害も報告されています。

今回の発表では、

・「かつら用」と表示されたヘナ製品を頭髪に使用
・アナフィラキシーショックで救急搬送
・全身じんましんなどの健康被害

といった、深刻な事例が報告されています。

でも実は、こうした問題は、突然起きた話ではありません。

私は今回のニュースを見て、2000年代初頭の“ヘナブーム”の頃を思い出しました。

当時から、「ヘナ」と名前がついていても、中身はさまざまだったのです。酸化染料を含むものや、雑貨扱いの製品、成分表示が不明瞭なものも流通していました。

ようは、“ヘナなら何でもいい”わけではないのです。

これは、いまヘナを使っている方、これからヘナを始めようと思っている方、そして化学薬剤を扱う美容師さんにも、自然派の美容師さんにも、ぜひ知っていただきたい問題です。

『ヘナ美容白書 ―植物の癒しで髪を育てる時代へ―』P108〜P111でも、この問題について詳しく解説しています。

2000年代、日本で起きた「ヘナブーム」

2000年頃から、日本ではさまざまな企業がヘナ製品を発売し始めました。

それまで一部の自然派層や美容関係者のあいだで知られていたヘナが、ドラッグストアや大手通販サイト、美容室などでも広く取り扱われるようになり、市場は急速に拡大していきました。

「植物100%」
「天然由来」
「髪や頭皮にやさしい」

そんなイメージとともに、“自然派カラー”としてヘナは広く認知されるようになっていったのです。

しかし一方で、市場の拡大とともに、大きな問題も起こり始めていました。

実際には、「植物100%ヘナ」と表示されていながら、重金属や、化学染料の一種であるパラフェニレンジアミン(PPD)などが混入された製品が市場に出回るようになっていったのです。

「ブラックヘナ」と呼ばれていた製品

インドではもともと、「ブラックヘナ」と呼ばれる、黒くしっかり染まる安価な製品が市場に流通していました。

そこには、化学染料が使われているケースもありました。

当時、日本へ輸入されていた製品の中にも、ヘナについての知識が乏しいまま、現地業者から「これはヘナ100%です」と説明され、そのまま輸入されていたケースが少なくなかったようです。

2000年代初頭にヘナを使っていた人たちに話を聞くと、

「髪が黒くなりすぎた」
「思った以上に強く染まった」
「刺激を感じた」

という声もありました。

本来、ヘナはオレンジ系に染まる植物です。

もちろん、インディゴなどの天然ハーブと組み合わせることでブラウン系に近づけることはできますが、当時市場に出回っていた製品の中には、天然色素だけでは説明できないほど強く発色するものも存在していました。

実際には、

・人工着色料が添加されていたもの
・ヘナ色素であるローソンがほとんど含まれていない粗悪原料
・ピクラミン酸などの染料を加え、“ヘナで染めたように見せていた製品”

なども流通していたのです。

加工場で起きていた問題

本来、ヘナは乾燥地帯で育つ植物であり、農薬の心配は比較的少ないとされています。

しかし、収穫後に粉末化される加工工程の中で、さまざまな化学物質が添加されたり、衛生管理が不十分なまま製品化されるケースもありました。

工場内での雑菌混入なども問題視されていたのです。

こうした背景から、「ヘナを使ってかぶれた」「湿疹が出た」といった健康被害の報告が増加し、国民生活センターにも多数の相談が寄せられるようになりました。

国民生活センター『たしかな目』の調査

国民生活センターはこれを重大な問題と捉え、2006年・2007年に発行された『たしかな目』誌上で、連続してヘナ製品の特集検証を行っています。

2006年10月号では、調査対象となった12社・14商品のうち、8商品について、「適正なパッチテスト表示が行われていない」などの問題点が指摘されました。

さらに調査では、

・「染毛できる」と表示されているにもかかわらず、ヘナ色素であるローソンがほとんど検出されない
・白髪がほとんど染まらず、染毛性能が極めて低い
・事前のパッチテストを促す表示がない

など、表示や品質に関するさまざまな問題が明らかになりました。

2006年時点の調査では、酸化染料を使用した製品は確認されなかったものの、翌2007年7月号の『たしかな目』では、さらに踏み込んだ内容が掲載されます。

そこでは、

「酸化染料を含む未承認のヘナ製品について、頭髪に使用する可能性がある商品として販売しないよう要請」

さらに、

「アレルギー発症の危険性について、表示改善を徹底すべき」

といった行政・業界への要望が掲載されていました。

また、“毛染め用雑貨品”として販売されている商品についても、

「消費者が誤って頭髪に使用しないよう、誤解を招く表示の改善を求める」

という内容が盛り込まれていました。

つまり、今回2026年に問題となった「かつら用ヘナ」の問題と、非常に近い構図が、すでに20年前から存在していたのです。

ラクシュミーの公式サイトでも、2006年と2007年の「たしかな目」を確認することができます。https://laksmi-jp.com/magazine/

ヘナを選ぶ際に、パッケージで確認したいポイント

ヘナを選ぶ際に、パッケージで確認したいポイントについて、今回は『ヘナ美容白書』の共著でも大変お世話になった森田要さんの手がけるラクシュミーのエコヴェーダ オーガニックハーバルヘアカラー(オレンジ)を例に挙げて、説明します。



オモテ面

ウラ面

【パッケージからわかるポイント】
・「化粧品」と明記されている
→ 雑貨ではなく、化粧品として販売されている

・「ヘンナ」のみ記載
→ 成分欄には「ヘンナ」と書かれている。日本の化粧品表示名称に沿っている

・植物学名「Lawsonia inermis(ローソニア・イネルミス)」が記載されている
→ 何の植物なのかを明確に示している

・「有機栽培によるヘンナ葉を乾燥させたパウダー」と説明されている
→ 原料について説明がある

・「白髪の部分のみを赤オレンジ色系に染着」と書かれている
→ “真っ黒になる”とは書かれていない

・「繰り返し使用することで色に深みが出ます」と書かれている
→ 一度で強く黒染めする表現ではない

・Fair for Life フェアトレード認証の記載
→ フェアトレード認証を取得している

・COSMOS ORGANIC認証マークがある
→ オーガニック認証を取得している

・OneCert認証マークがある
→ 認証機関名が明記されている

・Veganマークがある
→ ヴィーガン認証が表示されている

・GMPマークがある
→ 製造管理基準についての表示がある

・「化学物質、過酸化物、アンモニア、PPD、パラベン、GMO、その他成分不使用」と書かれている
→ 不使用成分が具体的に書かれている

・「EUでの皮膚科学テスト済み」と書かれている
→ テスト実施について記載がある

・インドの製造会社名、住所が記載されている
→ 製造元情報が開示されている

・日本の発売元(株式会社ラクシュミー)が記載されている
→ 日本側の販売元情報も明記されている

こうしてパッケージを見ていくと、

・「化粧品」として販売されているか
・何の植物なのか
・どんな色に染まるのか
・何が使われていないのか
・どんな認証を取得しているのか

など、実はさまざまな情報が書かれていることが分かります。

今回、国民生活センターが注意喚起した製品は、「かつら用」の雑貨品として販売されていたもので、本来は頭髪に使用する前提の製品ではありませんでした。

しかし、“ヘナ”という名前や、「天然っぽいイメージ」だけで受け取ってしまうと、その違いが分かりにくくなってしまいます。

だからこそ、パッケージに何が書かれているのかを、自分で確認することが、とても大切になっているのではないかと思います。

ヘナの素晴らしさが、誤解されないために

今回、国民生活センターが注意喚起を行った「かつら用ヘナ」の問題は、“ヘナそのもの”が危険という話ではありません。

本来、人体への使用を前提としていない「かつら用」の雑貨品が、美容室で頭髪に使用されていたこと。
さらに、酸化染料アレルギーがある人に対して、成分を十分に確認しないまま使用され、アナフィラキシーショックにつながったことが大きな問題です。

だからこそ、消費者だけでなく、美容室側にも、製品の表示や用途、成分をきちんと確認する姿勢が求められているのだと思います。

国民生活センターでは、ヘナを「染毛剤の代替として使用される製品のひとつ」と説明しています。

もちろん、白髪染めとしてヘナを使う人も多いと思います。
でも、長年ヘナに触れてきた私自身は、ヘナは単なる“染毛剤の代替品”ではないと感じています。

ヘナには、髪にハリやツヤを与えること、植物に包まれるような感覚、体や心がゆるむような癒しがあります。(さらにもっと素晴らしい効果も実感しています!)

化学的に髪を変えていくのではなく、「髪や頭皮を育てていく」感覚を持つ人も少なくありません。

だからこそ、“ヘナ”という名前だけが一人歩きし、本来の植物としての価値や魅力まで誤解されてしまうことは、とても残念なことです。

表示をきちんと読み、用途を確認し、本来のヘナの特徴を知ること。
それが、ヘナの素晴らしさを、これからも安心して受け取っていくために大切なことなのではないかと思っています。

いっしょに未来の髪を育てていきましょ!
ヘアライター/上條華江