
近年は1500円前後の高価格帯の商品が増えている。
2023年11月発行の美容業界の記事を読んでいて、興味深い言葉に出会いました。
それが「シャンプーの情緒的価値」という表現です。
※この言葉がとても印象的だったため、森田要さんとの共著『ヘナ美容白書―植物の癒しで髪を育てる時代へ―』でも触れています。
その記事によると、現在のヘアケア市場では、単なる機能だけでなく、感覚やイメージといった価値で商品を売る戦略が強まっているのだそうです。
「シャンプーの情緒的価値」という言葉は、いまのシャンプー市場の流れを象徴するキーワードのように思います。
つまり、シャンプーは単なる「髪を洗うための洗浄剤」ではなく、
・香り
・パッケージ
・ブランドの世界観
・リラックス感
・高級感
といった“気分”を売る商品として設計されている、という考え方です。
ヘアケア市場は「機能」より「気分」を売る
ドラッグストアのシャンプー売り場、いわゆる
“ゴールデンゾーン”(目線の高さに並ぶ、最も売れやすい位置)を見てみると、その傾向はよく分かります。
並んでいる商品の多くが
・ボタニカル
・オーガニック風のデザイン
・美容液のようなボトル
・癒しをうたう香り
・ラグジュアリーな世界観
といったイメージを打ち出しています。
そして価格帯も、1500円前後の商品が目立つようになりました。
かつては数百円のシャンプーが主流でしたが、現在は「少し良いシャンプー」を選ぶ消費者が増えているようです。
その背景には、
・サロン級
・美容液シャンプー
・ダメージ補修
・髪質改善
といった言葉で、「サロンのようなヘアケア体験が自宅でできる」というイメージを訴求するマーケティングがあります。
つまりシャンプーは、単なる「髪を洗うための商品」ではなく、
“豊かな気分になる商品”として販売されているのです。
これはマーケティングの世界では情緒価値(エモーショナルバリュー)と呼ばれる考え方です。
でも、本当に髪は良くなるのでしょうか?
ここでひとつ、冷静に考えてみたいのです。
そもそもシャンプーは、界面活性剤の力で汚れや皮脂を落とす「洗浄剤」。
基本的には、洗うためのものです。
ところが最近は、「ダメージ補修」や「髪質改善」、「美容液シャンプー」「サロン級」といった言葉が並び、まるで洗うだけで髪が変わるかのようなイメージが広がっています。
でも実際は、シャンプーはあくまで洗浄剤。洗うだけで髪が劇的に良くなる、というものではありません。
そもそも毎日シャンプーは必要?
もうひとつ大事な視点があります。
毎日シャンプーをする文化はそれほど昔からあるわけではありません。
戦前から昭和の時代までは、洗髪は毎日するものではなく、数日に1回〜週1回程度という人も多かったと言われています。
しかし、高度経済成長期から1990年代にかけて、「毎日洗う=清潔」という価値観が広まりました。
そして同時にシャンプー市場は巨大産業になりました。
ヘアケア市場は数千億円規模のビジネス
日本のヘアケア市場は現在、約5,300億円規模と言われています。
矢野経済研究所の調査によると、
2024年度の国内ヘアケア市場規模(メーカー出荷ベース)は5,367億円に達しています。
このヘアケア市場には
・シャンプー
・トリートメント
・アウトバストリートメント
・育毛剤
などが含まれます。
なかでも、シャンプーは市場の中心となる商品で、ヘアケアビジネスを支える代表的なアイテムです。つまり、ヘアケア産業は「髪を洗う」という習慣の広がりとともに成長してきた市場でもあるのです。
ミルボンが打ち出すヘアケア戦略
こうした市場の変化の中で、美容業界大手のミルボンもヘアケア市場の新しい戦略を打ち出しています。
ミルボンが注目しているのは、
「スモールマス市場」と呼ばれる考え方です。
これは、すべての人に同じ商品を売るのではなく、髪質や悩みに合わせて細かく市場を分け、それぞれに合った商品を提案していくというものです。
つまり
・くせ毛
・ダメージ毛
・エイジング毛
・カラー毛
といったように、一人ひとりの髪質や悩みに合わせたヘアケアを提案していく戦略です。
こうした動きもまた、ヘアケア商品を単なる洗浄剤ではなく、価値や体験を提供する商品へと変えていく流れのひとつと言えるでしょう。
髪は「洗いすぎない」ほうが育つ
最近、私が伝えているのは、
髪は一時的にキレイに見せるためのものではなく、育てていくものという考え方です。
・皮脂を大切にする
・頭皮を守る
・過剰な洗浄をやめる
そうすると、髪の状態は少しずつ変わってきます。
そしてヘナなどの植物を使ったケアは髪を傷めずに育てていくいく方法のひとつです。
ヘアケア戦略に振り回されないために
大切なのは、イメージではなく中身(成分)を知ることです。
・何が入っているのか
・本当に必要なのか
・髪や頭皮に負担はないのか
そうした視点を持つことで、ヘアケア商品の選び方は変わってくると思います。
人口減少が進む日本では、美容業界も新しいビジネスモデルを模索しています。
その中で、ヘアケア商品の高付加価値化は重要な戦略のひとつになっています。
「髪や頭皮にとって本当に大切なことは何なのか?」
その視点を忘れないことが、これからのヘアケア選びには大切です。
いっしょに未来の髪を育てていきましょ🌿
ヘアライター/上條華江

