「ヘナとカットのみ」の美容室は、本当に成立するのか?
森田 要さんと上條の共著本『ヘナ美容白書-植物の癒しで髪を育てる時代へ-』P139に、
「カラーもパーマもやめて見えたお客様との信頼」という原稿をご寄稿くださった、
hair works to-eRu(ヘアーワークス トエル)代表・大川和之さん。
これまでも大川ご夫妻には講演会やイベントで何度かお会いしていましたが、
群馬県邑楽町のサロンには伺ったことがなく、ずっと気になっていました。
というのも……。
「薬剤メニューを手放したら、売上はどうなるのか?」
「お客様は離れてしまうのではないか?」
そんな不安の声を、(化学薬剤を手放すことができない)美容師さんから本当によく聞くからです。
だからこそ、実際にヘナとカットだけの美容室へと転換された現場はどうなっているのか。
一度サロンを訪ね、じっくりお話を伺ってみたいと思っていました。
邑楽町にある一軒家の美容室は、靴を脱いで上がるスタイル。まるで友人の家に遊びに来たような、リラックスできる空間。どこか懐かしい雰囲気もします。
もちろん、化学薬剤特有のツンとした匂いは一切ありません。
独立して数年後の2021年5月、ご実家の近くにこの美容室を構えられたそうです。

植物に囲まれた平屋の美容室。
おしゃれで、かわいい〜🥰

靴を脱いで上がる美容室ははじめての体験。
正面には、精麻の飾りが迎えてくれます。
掃除が行き届いたクリーンな空間なのが伝わるでしょ!(見習いたい)
やっぱりプロのヘナ塗布は違う!
お話を伺いに訪れたところ、「せっかくだから、ヘナもやっていきませんか?」とお声がけいただき、
ちゃっかり(!)施術をお願いすることに。
驚いたのは、昨秋にお会いしたときの私の白髪の分量を覚えていてくださったこと。
その記憶をもとに、ヘナ7:アムラ3の配合で、前日からペーストを仕込んで準備されていました。
(※白髪が少ない場合は、アムラ3割と多めの配合がおすすめとのこと)
おしぼり用のウォーマーでペーストを温めてくださっていたことにも感激でした。
温かいヘナを頭にのせてもらう時間は、思わず力が抜けるような心地よさ。
こうした細やかな積み重ねが、信頼をつくっていくのだと感じました。
施術中は、そのままインタビューも進めていきました。
とりわけ印象的だったのは、迷いのない手の動き。細かくブロッキングしながら、丁寧に、無駄なく塗布していきます。速いのに、雑さがまったくない。
そのバランスに、経験の積み重ねを感じました。
ドライ前にヘッドマッサージをしていただき、仕上げはノンブロー・ノンアイロン。コームを軽く通しながら乾かしただけで、自然なツヤ髪に。
セルフヘナを続けてきた私にとっても、新しい発見でした。やはりプロの手は違う! そう率直に感じました。

ふわっサラッつや✨ の仕上がり。
週1セルフヘナをしている私も
驚きの美髪に仕上げていただきました!

それでいいのだ!
2024年の取り組みと、その先にあった変化
大川さんへのインタビューの中で、印象に残っているエピソードがあります。
まだカラー剤やパーマ剤を扱っていた、2024年のことです。
「40分の森田先生の動画を、とにかく全員に見せたんですよ。ひたすら」パーマやカラーをしているお客様、すべての方に。来店のたびに、3ヶ月間……。
すぐに受け入れる方もいれば、特に反応のない方もいる。それでも、大川さんはその時間を重ねていきました。
そして7月に「年内で、カラーとパーマをやめます」とお客様全員に伝えたそうです。
お客様の反応は、さまざまでした。
その場でヘナへ切り替える方。
これまでのスタイルから離れられない方。
過去の経験から、ヘナに良い印象を持っていない方も少なくありません。
「ヘナ」という言葉が、一括りにネガティブに受け取られてしまっている現状も、強く感じたそうです。
それでも、継続して通われているお客様の中には、少しずつ変化が現れてきました。
肝臓の数値が改善した方。
ストレートパーマをやめ、自分のクセ毛を受け入れられるようになった方。
頭皮のかゆみや抜け毛が軽減した方。
ほかにも、
「ツヤが出た」
「匂いのストレスがなくなった」
そんな声が、徐々に積み重なっていきます。
もちろん、大川さん自身に不安がなかったわけではありません。
「やめると決めた当初は、眠れない日が続きました」売上はどうなるのか? このやり方で、本当に続けていけるのか?
それでも、「やると決めたら、やるしかない」そう腹をくくり、ひとつずつ積み上げていきました。
奥さまの地元のマルシェへの出店や、SNSでの発信。
派手さはないけれど、確実に届く方法で、少しずつ広げていったのです。
ヘナとカットだけの美容室という選択
2025年1月、大川さんはメニューを完全に「ヘナとカット」に移行しました。
パーマやカラーをやめるという、大きな決断。
それにもかかわらず、その後の売上は前年同期を上回ったといいます。
大川さんが化学薬剤を使用していた頃は、仕上がりに納得がいかないときは、施術のやり直しを申し出ることもあったそうです。
それがなくなり、身体への負担も軽減。使う道具や材料も最小限になり、空間にも心にも余白が生まれたといいます。
一部のお客様は離れたものの、それ以上に新規のお客様が増加。遠方から訪れる方も多くなりました。
実際に見せていただいたメモには、新規のお客様の数が、失客数を上回っていることが記されていました。
さらに、一度離れたて別の美容室に行かれた方が、施術の丁寧さに気づいて戻ってくるケースもあったそうです。
「違い」は、伝わる人にはきちんと伝わる。そう感じさせる結果が出たのです。
その“違い”はどこから生まれたのか
大川さんは、若い頃から化学薬剤を扱う施術に携わる中で、ある違和感を抱いていたといいます。
「なぜ、こんなに傷むのだろう?」「なぜ、このやり方しかないのだろう?」
「ダメージの少ない薬剤を選ぼうとしても、勤めていた美容室では受け入れられないことがほとんど」
新しい方法よりも、これまでのやり方が優先されるのです。
そうした現実の中で、美容業界の“変わりにくさ”にも気づいていきます。
独立後は、自分なりに工夫を重ねていきました。薬剤を見直し、塗布の仕方を変え、頭皮への負担を減らす。それでも、どこかで限界を感じるようになります。
そして、たどり着いたのがこの気づきでした。
「できるだけ頭皮や髪に良いものを使うこと」と、「そもそも使わないこと」は、まったく別の選択であるということ。
さらにその違いは、技術や方法の問題にとどまりません。
どんな“想い”でお客様と向き合うのか? その根本の違いでもあったのだと、私は感じました。
髪をデザインするための施術なのか?
それとも、髪や頭皮を育てていくための関わりなのか?
目指すものが違えば、選ぶ手段も変わる。そしてその積み重ねが、結果の違いとなって現れてくる。
ここには、お客様の髪だけでなく、その人の暮らしや健康までも視野に入れた美容のあり方がある。そんな印象を受けました。

こういう発想も大川さんらしくてステキ。
アンティークの家具や小物もひとつひとつが可愛くて、
見ているだけで楽しい空間♪
『ヘナ美容白書』発見(笑)。
植物図鑑も置いてありました!

シャンプー台でのヘナ野茂流しも心身がゆるむ時間でした。
2026年の新たな挑戦
2026年3月には、お声がけを受け、埼玉県加須市でワークショップを開催。ヘナの基本的な考え方や体験を伝える機会となりました。
初めての場所でありながら、参加者の方々に温かく迎えられ、大川さんの活動やヘナの魅力を知っていただく場にもなったといいます。
こうした場で興味を持った方が、後日美容室に足を運ぶ。そこからまた、新たなつながりが生まれていく。そんな循環も、少しずつ広がり始めています。
今後は群馬県外での活動にも力を入れていきたいと話されていました。
【大川さんの取り組みのここがすごい】
— ヘナとカットの美容室への転換を支える4つのポイント —
① 予約の取り方
サロン内でお客様同士が重ならないよう、時間を調整。
そのため、「いつ来てもお客さんがいないけど、大丈夫?」と心配されることもあるそうです。(笑)
これは、一人ひとりと丁寧に向き合うための工夫。空間そのものが、“その方のための時間”として用意されているのだと感じました。
② 明朗な料金設定
ヘナやカットの料金は事前に明確に提示。
髪の長さによってヘナの追加が必要な場合も、その都度きちんと説明されます。
「会計時に驚くことがないように」。そんな配慮が徹底されています。
③ 良心的な価格設定と関わり方
価格設定が良心的であることもあり、週に一度のペースで通われる方もいらっしゃるそうです。
一方で、抜け毛に悩んでいた方には、「ご自宅でのケアもがんばってみてくださいね」と背中を押すことも。
無理に通わせるのではなく、その方にとって本当に必要な頻度や方法を一緒に考えていく。
こうした関わり方の積み重ねが、結果として髪や頭皮の変化につながっているのだと感じました。
④ 施術の細やかさと情報の共有
美容室を訪れて印象的だったのは、施術の細やかな事前準備です。
私の場合も、白髪の分量に合わせてヘナとアムラの配合を調整し、前日からペーストを仕込み、ウォーマーで温めてくださっていました。
頭にのせた瞬間に伝わる、あのやわらかな温かさ。施術を超えた愛を感じました😆
そしてもうひとつ。hair works to-eRuさんは、髪を整える場所であると同時に、髪や頭皮、さらには身体のことまで含めた情報源にもなっているように感じました。
日々のケアや選択について、必要なことを共有していく。押しつけにならない積み重ねが、お客様自身の意識や行動の変化につながっていくのだと思います。

あやかちゃんは南インドを訪ね、
アーユルヴェーダや食、植物のことを学ばれている勉強家。
マルシェ出店やSNSでも大川さんをサポートされていて、
本当に素敵なパートナーだなぁと感じました。
そして!
最高におもろいコンビです😂
会うたびに笑って、癒されます😆
【最後に】
「ヘナとカットの美容室に移行するときは眠れなかった」という言葉に、並大抵ではない覚悟を感じました。
でもその話をすると、「覚悟じゃないんですよ〜」と、笑って返されました。
肩に力を入れて突き進んだというより、奥さまと二人三脚で、ひとつずつ試しながら進んでこられた。
そんな穏やかな空気のほうが、大川さんにはしっくりきます。
そして、最後にこんな言葉をいただきました。
「今どういう行動をするかで、3ヶ月後が変わると思って仕事をしています。
すぐに結果が出なくても、これまで積み重ねてきたことが、今につながっている。
だからこそ、毎日を大切に積み重ねていきたいと思っています」
群馬は少し遠いけれど、また行きたい。
そしてもう一度、あの温かなヘナを塗ってもらいたい。
そう思える場所でした。
店内には植物もいっぱい🌿
大川さんが大切に育てている「ヘナの木」もあるので、ぜひチェックしてみてくださいね😊
【サロン情報】
hair works to-eRu(ヘアーワークス トエル)
群馬県邑楽郡邑楽町中野3099
TEL:0276-55-6305
■料金の目安
・ヘナ(シャンプー・ブロー込み)6,600円〜
※使用量に応じて+10gごとに追加あり
・ヘナ塗布のみ
塗布代2,500円+使用したヘナ代
※詳しくはサロンにてご確認ください。

hair works to-eRu(ヘアーワークス トエル)大川さんの、
ヘナとカットの美容室への転換事例も掲載されている
『ヘナ美容白書 − 植物の癒しで髪を育てる時代へ −』(彩流社)も、
ぜひ手に取ってみてくださいね📖
https://www.amazon.co.jp/dp/4779130778
髪にも人にも誠実な、自然派美容室が全国へと広がりますように☆彡
ヘアライター/上條華江

